個人事業主は、どのような確率で調査されるのか。また、調査を落ち着いて受けるためにはどうしたらいいのか。通知が来たら税務調査を受ける必要があります。慌てないために、日頃からできることをここでは紹介していきます。
目次
税務調査来ないけど何年に1回来る?
28年の調査は64万件で確率は3%
個人事業主として気になるのは、税務調査が行われる対象になるのは事業者のうちどれくらいなのでしょうか。平成28年の調査では64万件です。確率としては全体の3%に当たります。年数で考えてみると、個人事業主が税務調査を受けるのは、約70年に一度となります。
税務調査は白色申告や無申請も対象
確定申告には、青色申告と白色申告がありますが、申告の仕方によって税務調査を避けられるわけではありません。そもそも税務調査は国家の税収を確保するために、正しい申告納税、課税の公平性を維持するために行われています。
脱税を防ぐのはもちろん、複雑な税制のもとでの申告が正しくなされているか、チェックするためのものです。また、この制度があるからこそ、個人事業主もきちんと申告をするよう努力するきっかけになります。
ですので、税務調査は青色申告のみならず、白色申告や無申告も対象になるのです。
調査が入りやすい時期と当日の流れ
7月~11月頃が税務調査が入りやすい時期です。通知は事前に電話や手紙が来ますが、場合によっては、通知なしで突然入る場合があります。
当日、調査官は1人~3人で午前10時ごろにきます。調査官にもよりますが、通常は一般的な挨拶の後、少し世間話をしてから、事業の概要や代表者の経歴などについて質問されます。
そして事業の規模や取引先などを聞き、帳簿書類の審査に入ります。お昼休憩をはさみながら、午後5時頃まで調査が行われます。個人事業主であれば、1~2日で終了します。
税務調査で調査される項目
売上の計上時期のずれ
「商品を引き渡したとき」や「サービスを提供したとき」に売り上げの計上をすることになっています。相手先からの「入金」やこちらからの「請求書出し」のタイミングではありません。これを間違えてしまうこともありますが、追徴課税の対象になるので気をつけましょう。
交際費の中の個人経費
親戚の結婚祝、自宅に飾ってある絵画、家族旅行、プライベートの食事等、事業の経費として計上できないものを交際費として入れてしまう場合があります。プライベートの経費を計上することは許されません。日頃から、事業とプライベートはしっかり分けましょう。
在庫計上もれ
在庫は事業主が自分で作った在庫表をもとに管理しているので、個人事業主が在庫計上が漏れてしまう可能性があるので詳しく調査します。
売上の計上もれ
レジのレジロールを見ていき、売上が正しく上がっているかを確認する方法は基本的な調査方法です。顧客に対して、正しく売り上げを上げているかチェックされます。記録せずに売り上げを抜き、個人口座に振り込むようなことは許されません。場合によっては、個人口座の開示を銀行に働きかけます。
架空人件費
架空人件費で利益を減らすことを考える事業者がいます。給料として支払ったことにして自分のお金にしたり、会計上だけを水増しして実際には支払わなかったりする方法です。
この疑いから逃れるには、下記従業員の記録を大切に保管することが重要です。
- 履歴書
- 給与台帳
- 扶養控除等申告書
- タイムカード
ど
んな個人事業主が税務調査の対象になる?
明確な基準はないが高い売上高
税務調査の対象になりやすいのは、売り上げや事業の規模が大きい事業者です。年間の売上高が200万円と2,000万円では、売り上げの大きい事業者の方が対象になりやすいです。
税務署では、毎年の申告内容から納税者の所得や税額などのデータを集めています。これらのデータから、対象となるべき事業者を割り出しているのです。
創業して5年以上経過している
税務調査でさかのぼって調査する年数は、基本的に3年です。意図的ではないミスによる問題があった場合は5年、明らかな脱税の痕跡が見られる場合は7年さかのぼって調査します。
起業から3年を過ぎれば、調査するための基本的な書類がそろうということになります。また、創業5年以上で軌道に乗り始めていれば、調査の対象として申し分ありません。
顧問税理士がいない
顧問税理士がいなければ、提出書類を自分で作成することになります。その結果、書類不備による申告漏れが発生しやすくなります。
税理士を通していないからといって、即座に調査の対象になるわけではないのですが、結果として書類に不備があるケースが多くなる傾向があります。ですので、顧問税理士がいないということが税務調査の対象になりやすいと言えます。
経費のかからないブログ収入など
現実的な物を販売して利益を得るわけではない事業では、実態が把握しにくいため、調査が入りやすいと言えます。
本人が持ち得る能力が軸になっているので、経費もかからず、申告漏れも発生しやすいのが実態です。
所得金額が極端に少ない
確定申告書には所得別の収入金額を記載する欄が設けられています。この内容と事業内容等から総合的に判断して、最低限の生活費が捻出されないような不自然な金額である場合は、調査の対象になりやすい傾向があります。
税務調査で慌てないための対策とは?
通帳の口座を個人と事業に分ける
通帳の口座は、個人用と事業用に分けることが重要です。不正をする気がなくても、個人の会計上の処理を誤って事業費として計上してしまう間違いを起こす可能性があります。また、申告の際にいちいち振り分けるのも手間なので、口座は別々にすることをお勧めします。
取引先とのやりとりで、個人用の口座に代金を振込ませて誤魔化しているのでは、といった疑いを避ける為でもあります。
領収書やレシートは整理して保管
税務調査で、速やかにわかりやすく何のためのお金なのかを伝えるようにするためにも、領収書やレシートはきちんと整理して保管しておきましょう。必要経費として計上できるかどうか、関連性も分かるのが領収書やレシートです。月ごと、さらには日付ごとに分類して、整理しておくことをお勧めします。
税務調査の際には提示を求められるので、困らないように普段から見やすく保管するよう心掛けましょう。
過去7年分の書類をすぐに提示できる
帳簿や領収書等は確定申告の際に提出するわけではありませんが、提出する書類の根拠となるので、7年間は保存する義務があります。税務調査で開示を求められた際は、すぐに提示できるように年ごとにまとめて整理しておくことが肝要です。
白色申告の場合
- 収入金額や必要経費が記載してある帳簿は7年間保存
- それ以外の帳簿・及びその他の書類(領収書や請求書など)は5年間保存
青色申告の場合
- 帳簿や決算関係の書類、現金や預金の取引等に関係した書類は7年間保存
- その他の書類については5年間保存
脱税思考を捨てる
脱税が発覚すると、所得税法238条1項により、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科となっています。更に加算税があります。
- 過少申告加算税:追加納税額の10%・期限内に確定申告した額か50万円の多い方を超える部分は15%
- 無申告加算税:50万円までは15%・50万円を超える部分20%
- 不納付加算税:納付税額の10%・指摘以前は5%に軽減の場合有
- 重加算税:過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%・無申告加算税に代えて40%
また延滞税も加算されます。不正が発覚すれば本来の税金より、高い金額を支払うことになります。そもそも、税務調査は脱税を取り締まるものではありません。申告の漏れや不正を指導しすることを中心としています。
適切な手続きを行っている事業者であれば、税務調査の通知が来たとしても脅える必要はありません。脱税しようなどとは考えない事です。法に従った申告さえしていれば、上記のような追徴課税の恐れもありません。
まとめ
税務調査は、基本的に正しい申告を行っていれば、たとえ対象となったとしても恐れることはありません。脱税思考を持たない事と、日々の地道なミスの無い帳簿つけや領収書等の整理を大切にすることです。事業主として自信とを持って、事業経営を行ってください。